R・ハイネ=ゲルデルン (1885〜1968)
Robert Heine-Geldern

『文化人類学事典』(弘文堂,1994)の 【R.ハイネ=ゲルデルン】項より抜粋

「 … オーストリアの民族学者で、ウィーンばかりでなくドイツ語圏の歴史民族学の代表者の1人だった。 東南アジアを専門とし、東南アジア民族学ばかりでなく東南アジア先史学の体系も、ともに第2次大戦前に樹立し、大きな影響を及ぼした。 巨石文化と勲功祭宴との結びつき、石斧の諸形式を指標とした東南アジアの民族移動史、高文化地域における宇宙論的世界観などがその主な研究である。 また1923年に著された「東南アジア民族概論」は、きわめてすぐれた古典的概観である。
   … (中略) …
 戦後のハイネ=ゲルデルンの学問的関心は、太平洋を越えて旧大陸(中国、東南アジア)から新大陸に及んだ影響が新大陸古代文明発生に刺激を与えたという仮説に傾注された。 彼はウィーンで活躍したが、シュミット(W.Schmidt)の文化圏説には終始批判的態度をもっていた。 今日、ハイネ=ゲルデルンの学問的立場は、伝播主義として批判が多く、その仮説も疑問視するものが多いが、彼の学問の本格的評価はまだ行われていない。 … 」
執筆:大林太良