シャープール1世の代から国教ゾロアスター教の祭祀長に就いていたキルデールの像と言われるレリーフ。
キルデールはササン朝ペルシアの正統性に根拠を与える機能を果たしてきたゾロアスター教最高位の神官で、国教としての既得権益を守るためにキリスト教、ユダヤ教、マニ教、仏教、ヒンドゥー教など他の宗教を激しく弾圧した人間。
また、王位の継承問題にも口を挟み、シャープール1世の後を継いだホルミズド1世、ワフラーム1世、ワフラーム2世、ホルミズド2世などの政治に大きな発言力を持っていたという。キルデール1人の存命中に、これほど何代も王が入れ替わるというのは王たちは皆若くして死んだ(殺された)ということなのだろうか。
キルデールの像はナグシェ・ロスタム遺跡のレリーフ「ローマ帝国皇帝ウァレリアヌスをひざまづかせている馬上のシャープール1世」の背後にもチャッカリと彫られている。何か薄気味悪くてウサン臭い存在。このレリーフに彫られた妙な指先の仕草は呪術にも通じていそうな雰囲気がある。若き王たちを背後で操る怪僧と言っていい男だろう。
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